【2018年改正】古物営業法改正で変わる4つのこと

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古物営業法の改正

2018年4月17日古物営業法が改正され、4月25日に公布されました。

今回の古物営業法の改正では、大きく分けて4つの変更点(+1)があります。

それらによって何がどう変わるのか、既存の古物商許可業者にどんな影響があるのか解説していきます。

【追記】2018年10月24日から、改正点(2)~(5)が施行されました。

【追記2】2020年4月1日から、改正点(1)が施行されることが決定しました。

古物営業法の4つの改正点

改正点について、影響が大きいと思われるものから順に解説していきます。

以下、改正前の法律を「現行法」、改正後の法律を「改正法」と表記します。

(1)都道府県ごとの許可から全国共通の許可へ!

改正前
改正後
複数の都道府県に出店する場合、
都道府県ごとに許可を受ける必要がある。
複数都道府県に出店する場合でも、
1か所で許可を受ければ、他は届出だけでよい。

現行法では、古物商許可は営業所(店舗)を設置する都道府県ごとに受ける必要があります。例えば、岡山県と広島県に店舗を置く場合、岡山県と広島県でそれぞれ許可を受けなければなりません 1

新たな都道府県に出店する度に許可申請手続を行う必要があり、特に全国展開をするチェーン店などは多大な時間 2と手間を掛けなければなりませんでした。

改正法では、主たる営業所がある都道府県の許可を受ければ、他の都道府県に営業所を置くときは届出のみで足りる 3ことになります 4。例えば、岡山県に本店を置く会社は、岡山県で営業許可を受けていれば、あらかじめ届出をするだけで47都道府県どこでも出店できるようになります 5

古物商にとってはコスト削減や機会損失の削減などのメリットがあると同時に、各都道府県ごとに審査を行う必要がなくなるため、行政コストの削減にもつながると考えられています 6

なお、現在古物営業許可を受けている事業者は「主たる営業所」を定める届出をしなければなりません(2018年10月24日~2020年3月31日までの間)。営業所が一つしかない事業者でも届出の必要があります。届出をしなければ施行日以降は無許可営業となってしまいます。

参考:岡山県警察「古物営業法の一部改正のお知らせ」(ページ下部から届出様式がダウンロードできます)

(2)仮設店舗での営業ができるように!

改正前
改正後
買取った古物を受取れる場所は、
営業所か、お客の家だけ。
あらかじめ届出をすれば、
仮設店舗で古物を受取ることもできる。
古物商が、買取りのためにお客から古物を受取ることができる場所は、法律で制限されています 7

現行法では、古物商の営業所(店舗)か、お客(売主)の家(住所又は居所)以外の場所で、買取り等のために古物を受取ることはできません 8

ですから、デパートの催事場やホールなどのイベント会場で、古物を買取って受け取るということはできません。古物の販売のみを行うか、買取契約をして後日に営業所やお客の家で受取るくらいです。

改正法では、あらかじめ日時・場所の届出をすれば、営業所やお客の住所以外の仮設店舗 9で古物の受取りができるようになります 10

営業所のない都道府県であっても仮設店舗の出店はできる 11ので、都道府県の枠を超えたビジネス展開も容易になるでしょう。

古物受取りの場所が広がることで、古物商にとってはビジネスチャンスの拡大につながりお客にとっても利便性の向上につながることが期待されます 12

(3)簡易取消し制度の新設

改正前
改正後
許可取消しには、
3カ月以上所在不明であること等を
公安委員会が立証し、聴聞の手続を経る必要がある。
古物商や営業所の所在を確知できないときは、
公告+30日経過で許可取消しができる。
古物商許可は有効期限や更新手続がないため、所在不明の古物商や廃業後も届出をしていない許可が相当数あると推測されています 13。所在不明の古物商に対しては指導・監督ができませんし、名義貸しなど許可が悪用されるおそれもあることから、実態のない許可は取消されるべきです。

しかし、現行法では、公安委員会が古物商の所在不明等の事実を証明して意見聴取の聴聞手続を実施しなければ、許可の取消しはできません。 14。コストが掛かり、迅速な取消しはできません。

そこで、改正法では、営業所や古物商の所在が分からないときは、その事実を公告し、30日を経過しても本人から申出がないときは、聴聞の実施なしで許可の取消しができるようにしました 15

具体的な手続は未定ですが、住所・氏名等の変更があったときや営業をやめるときは、公安委員会(窓口は警察署)に届出をすることを忘れないようにすることが大事になると思います。

(4)欠格事由の追加

改正前
改正後
暴力団員や窃盗罪で罰金刑を受けた者でも
古物営業許可の制限はない。
暴力団員や窃盗罪で罰金刑を受けた者を排除する、
許可の欠格事由の追加。
古物営業をするのに許可が必要なのは、盗品の売買を防止することで犯罪を防ぐためです。

ですから、現行法でも古物商許可は誰でも受けられるものではなく、過去5年以内に許可を取り消された人や、懲役や一定の犯罪で罰金刑を受けた人は許可を取得することはできません 16

それだけではなく、暴力団関係者や窃盗罪を犯したばかりの人など、犯罪に利用するおそれのある人にも許可を与えるべきではありません。

これら許可を受けられない理由を欠格事由と言いますが、暴力団関係者や、過去5年以内に窃盗罪で懲役や罰金刑を受けた人が欠格事由に追加されました 17

この改正に伴い、許可申請時に提出する誓約書の文言が一部変更になっています。古い用紙を使うと再提出となることがありますのでご注意ください。

(5)本人確認方法の追加

法律だけではなく施行規則も改正され施行されました。詳細は下記記事で解説しています。

いつから改正法が適用される?

(2)~(5)は、2018年10月24日から施行、(1)全国共通の許可は2020年4月1日から施行されます。

最後までお読みいただきありがとうございます
この記事が参考になりましたならば幸いです。
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担当行政書士:松葉 紀人

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◆脚注◆

  1. 現行法3条1項。
  2. 公安委員会に申請を提出してから許可が下りるまでに最低でも1か月前後掛かります。申請の準備を含めるとさらに時間が掛かります。
  3. 一般的には、許可よりも届出の方が手続は簡単です。許可申請は行政庁が許可・不許可の判断を下すまで終わりませんが、届出は要件を整えて行政庁に通知するだけで完了するからです。
  4. 改正法3条、7条1項、5条1項2号。
  5. どの営業所を「主たる営業所」にするかは申請者が自由に決められ、必ずしも本店や本社を選ぶ必要はありません。申請や届出をするのに都合がよい、通いやすい場所を選ぶのがいいと思います。
  6. 古物営業の在り方に関する有識者会議報告書」2頁など参照。
  7. 買取りの約束(契約)をする場所や古物を販売する場所の制限はありません。
  8. 現行法14条1項。
  9. 現行法でいう「露店」のことで、「営業所以外の場所に仮に設けられる店舗であって、容易に移転することができるもの」と定義されています(改正法5条1項5号括弧書き)。
  10. 改正法14条1項但書。
  11. 改正法14条2項参照。
  12. 古物営業の在り方に関する有識者会議報告書」3頁など参照。
  13. 古物営業の在り方に関する有識者会議報告書」4頁など参照。
  14. 現行法6条、行政手続法13条1項1号イ。聴聞は、当事者に反論・弁明の機会を与える手続で、比較的厳格な手続です
  15. 改正法6条2項、3項。
  16. 現行法4条。
  17. 改正法4条2号~4号。
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