せどりやオークションで稼ごうと思ってネットで検索したら、「古物商」ってキーワードが出てきたんだけど……
「古物商」って何?
古物商って何?
簡単に言えば、古物商とは、
「古物を売買したり、交換したり、誰かの依頼を受けて売買や交換をしたりする営業(古物営業)をする人」のことです。
古物営業法という法律(以下、条文だけ記載した場合はこの法律の条文です)で規定されており、古物商の許可を受けずに古物営業をすると、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金、悪い場合はその両方が科せられてしまいます(31条1号、36条)。
しかも、せどりやネットオークションで稼ごうとするときは古物商の許可(免許)が必要な場合が多いです。
「許可が必要とは知らなかった……!」と後悔してからでは遅いので、
せどりを始める前に、古物商とは何か、どんな場合に許可が必要なのか、予めしっかり確認しておく必要があります。
古物商のキーワード
・古物
・古物営業
・古物商の営業許可
古物って何?
古物と聞くと、骨董品やアンティークを白手袋をして持ち、虫眼鏡で観察して「いい仕事してますねぇ~」と言っている光景が浮かぶ人もいるかもしれません。
「古物」には、古い時代の壺や皿、絵画や彫刻なども入りますが、それだけではありません。
「古物」とは、
- 一度使用された物品(中古品)
- 使用されない物品で使用のために取引されたもの(新古品)
- 中古品や新古品に幾分の手入れをしたもの
を言います(2条1項)。
一度読んだ本やコミック、使い古したパソコンやブランドバッグ、家族とのドライブの思い出が詰まった車などが「中古品」に当たります。
買ったものの開封しないまま積んでいたゲームソフトや、近くにお店がなくて使えない商品券などが「新古品」です。
「幾分の手入れをしたもの」には、傷がついたDVDを研磨して再生可能にしたものや、パーツを付け替えた自転車などが該当します。
古物の範囲は意外と広いことが分かるではないでしょうか。
なお、船舶、航空機などの一部の大型機械類 1や、コレクション目的で収集された古銭・切手、 2また庭石や石灯籠、金属くず等 3も古物には該当しません。
古物営業って何?
次に、古物商の許可が必要となる古物営業とはどんなことでしょうか?
古物営業とは「古物の売買や交換、あるいは他人から委託を受けてそれらの行為を、お金を稼ぐために繰り返し行うこと」です(2条2項1号) 4。
単に中古品を売買するだけではなく、利益を出す目的で継続して行うとき 5に限って、古物営業となります。
ですから、自分で読むために古本屋で本を購入したり、友達同士で1回限りの売買をする場合などは古物営業ではありません。
また、「古物を売るだけ」あるいは「自分が売った物を、相手から買戻すだけ」ならば、古物営業には当たりません(2条2項1号後段)。
つまり、自分で使っていた物を売ったり、他人に売った物を「やっぱり返して!」と買戻すだけならば、古物営業には当たらないのです。
古物商の許可が必要な場合って?
古物営業法の規定を踏まえて、古物商の許可が必要な場合と不要な場合の例を挙げます。
古物商許可が必要な場合の例(1回限りの場合は除く)
- 個人やお店から古物を買って、他の人に売る
- 他人に売って利益を上げる(転売する)目的で、古物を購入する
- 古物を買って、修理をしたり、部品を分解したりして、他の人に売る
- 古物を預かって他人に販売し、販売手数料をもらう(売買の委託・仲介)
- 古物を買って、他人にレンタルする
- 国内で買った古物を、国外に輸出して販売する
- 上記の取引を、インターネット上で行う
古物商許可が不要な取引の例
- 自分の物(中古品や新古品など)を売る
- 新品の製品(中古品でも新古品でもない)を購入して、転売する
- 無料でもらった物(買取りしていない物)を、他人に売る(古物を売るだけ)
- 相手から手数料をもらって引き取った物を、他人に売る(不用品回収をして転売する場合など)
- 中古品を売るだけで、買取はしない
- 下取り等によって、自分が売った相手から製品を買い戻す(売った相手から直接買戻す場合のみ)
- 自分が海外で買った物を、国内外で売る(他の輸入業者が輸入した物を買って売る場合は許可が必要)
結局、せどりは……?
以上のことから、転売目的で中古本・ゲームソフト店などで中古品を安く購入し、インターネット等で売却してお金を稼ぐ「せどり」は、「古物を売買する営業」であり、古物営業から除外される取引にも該当しないので、古物営業の許可が必要となります 6。
自分で読むために中古本を購入した(「営業目的」ではない)ものの、結局読まずに中古本屋や友達に売る(「古物を売るだけ」)場合とは異なる 7わけです。
せどりでお金を稼ぐことを考えている方は、「違法かもしれない」とビクビクしながら稼ぐ前に、将来を見据えて、古物商の許可を取ることをお勧めします。
ご不明な点、ご相談、ご依頼のある方はお気軽にお問い合わせください。(初回相談無料)
【松葉会計・行政書士事務所】
担当行政書士:松葉 紀人
お電話:(0863)32-3560
※古物商の許可が必要か否かは、個々の事情によって異なります。
個別のご依頼によらず、本サイトの文章・情報等に基づいて被ったいかなる被害についても、 一切責任を負いかねます。
◆脚注◆
- 古物営業法施行令2条に具体的な規定があります。 ↩
- コレクションは本来の使用目的ではないので、古物には当たらないと考えられています。 ↩
- 金属くずの売買を業とする場合に、許可や届出が必要な都道府県もあります。 ↩
- 厳密には、古物市場の経営(古物市場主)や、ネットオークションサイト経営(古物競りあっせん業者)も古物営業に含まれます(2条2項2号・3号参照)が、せどりとは直接関係ないので別の機会に説明します。 ↩
- 本人がどう思っているか、また実際に繰り返し行われているかとは別に、継続して行う予定であることが客観的に分かる場合には該当します。 ↩
- 念のため、私の住む岡山の警察署にも問い合わせましたが、「許可が必要だろう」との回答でした。 ↩
- 前述のように、「営業(転売)目的」かどうかは、本人がどう思っているかではなく、第三者がどう評価するか客観的に判断されます。例えば、中古の映画DVDを30本購入して、その日のうちにネットオークションに出品した場合は、「これは自分で観るために買ったのだ」と言っても、よほど特別な事情がない限りは「営業目的」と推測されるでしょう。 ↩