古物商許可をもらえない6通りの人(+α)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

古物商の許可は誰でも取得できるわけではなく、一定の欠格要件に該当する人は許可を取得することが出来ません

欠格要件は大きく分けると6つあります。

欠格要件に該当すると、どれだけ頑張っても許可を取得することはできないので、その6つの要件を確認しましょう。

古物営業法第4条  公安委員会は、前条の規定による許可を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、許可をしてはならない。

参考:警察庁HP(モデル審査基準又は標準処理期間等が作成されている許認可等一覧表

①成年被後見人、被保佐人、破産者など(1号)

一  成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの

まず、成年被後見人・被保佐人、破産者で復権を得ない者は古物商になることができません

成年被後見(保佐)人とは、精神上の障害などで財産管理の判断ができないとして、家庭裁判所の後見(保佐)開始の審判を受けた人ですから、心当たりがない人は問題となりません(民法8条~)。

そして、破産者で復権を得ない者とは、破産手続を開始してから免責許可の決定が確定する 1までの者です(破産法255条)。

おおよそ裁判所に破産申立てをしてから3~6ヶ月程度で免責許可が確定(=復権)しますから、よほど急いで古物商許可が必要な場合を除けば、これも特に問題となることはないと思います。

なお、一度破産すると7年間は再び破産する(免責許可決定を受ける)ことができない(破産法252条1項) 2ことから、7年間は許可が取れないと誤解されている方もいるかもしれませんが、破産・免責の手続が終われば復権するので安心してください。

②5年以内に一定の刑に処せられた人など(2号)

二  禁錮以上の刑に処せられ、又は第三十一条に規定する罪若しくは刑法 (明治四十年法律第四十五号)第二百四十七条 、第二百五十四条若しくは第二百五十六条第二項に規定する罪を犯して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることのなくなつた日から起算して五年を経過しない者
過去5年以内に禁錮以上の刑を受けたり、特定の犯罪で罰金を課された者は、許可を取得することが出来ません。

「禁錮以上の刑」を受けた者には、執行猶予付きも含まれるので、現実に刑務所に入った者だけではありません。しかし、執行猶予期間が満了すれば、5年の経過を待つことなく、直ちに許可を得ることが可能になります 3

「禁錮以上の刑」で現実に問題となるものは、懲役または禁錮です 4。これはどんな犯罪をしたかに関わらず、欠格要件となります。

無許可の古物営業や、背任など特定の財産犯罪を犯して罰金刑を受けた者も許可が受けられません 5。古物営業を許可制にした目的が窃盗などの財産犯罪を防止するためであることを考えれば納得です。ですから、例えばスピード違反で罰金 6を取られた人でも、この要件には該当せず、許可をもらう資格はあります。

 

上記の刑の「執行を受けることのなくなつた日から起算して5年を経過しない者」もまた許可をもらえません。仮釈放(刑法28条)や刑の時効(同31条)、恩赦(恩赦法8条)によって刑を受けることがなくなってから5年以上経過しない者が該当します。

③住所不定の人(3号)

三  住居の定まらない者

住所のない者は古物商の許可を得られません。許可申請をするときに住民票を提出する必要がありますので、実際に問題となるケースはほとんどないと思われます。

④5年以内に古物商許可を取り消された人など(4号・5号)

四  第二十四条の規定によりその古物営業の許可を取り消され、当該取消しの日から起算して五年を経過しない者(許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の期日及び場所が公示された日前六十日以内に当該法人の役員であつた者で当該取消しの日から起算して五年を経過しないものを含む。)
五  第二十四条の規定による許可の取消しに係る聴聞の期日及び場所が公示された日から当該取消しをする日又は当該取消しをしないことを決定する日までの間に第八条第一項第一号の規定による許可証の返納をした者(その古物営業の廃止について相当な理由がある者を除く。)で、当該返納の日から起算して五年を経過しないもの
法令違反等を理由として古物営業許可を取り消された者(法人の許可取消の場合は、その役員も含む)は、取消しから5年間は許可を取ることが出来ません。

すぐに許可の再取得ができるのであれば、取消しの意味がなくなるからです。

「ならば、取り消される前に、自分から許可を取り下げてもらおう!」と、取消の通知を受けてから許可証を返納した者も同様の扱いです。そんなに簡単に抜けられるほど法の網目は荒くありません。

ちなみに、廃業など、法令違反や取消の通知と無関係に許可証を返納した場合は、特に法律上の制限はないので、許可の申請をすることができます。

⑤会社の役員が①~④に該当する場合(8号)

八  法人で、その役員のうちに第一号から第五号までのいずれかに該当する者があるもの

会社・法人が営業許可を得る場合は、会社自身だけでなく、その役員に上記①~④欠格要件に該当する者がいれば、許可を得ることができません

社長だけでなく、役員全員が対象なので注意が必要です。

なお、対象は①~④だけですので、会社役員が未成年であっても問題ありません。

⑥未成年(20歳未満)の人(6号)

六  営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者。ただし、その者が古物商又は古物市場主の相続人であつて、その法定代理人が前各号及び第八号のいずれにも該当しない場合を除くものとする。

原則

未成年者 7は、古物営業の許可を得ることが出来ません。これが原則ですが、3つの例外があります。

例外1.婚姻した人

結婚すると、成年者と同じとみなされ(成年擬制:民法753条)、古物営業の資格が得られます。

例外2.法定代理人から営業を許された人

法定代理人(いわゆる保護者)が古物営業について同意した場合にも、未成年者は営業許可を得ることが出来ます(民法6条)。

あくまで古物営業についての同意が必要で、アルバイトの許可や別の営業に関する同意があっても、許可を得ることはできません。

例外3.古物商の相続人である者

古物商の相続人である未成年者であって、法定代理人が古物営業の欠格要件に該当する者でないときは、許可を得る資格があります。

親が亡くなって、子供が跡を継いで営業する場合を想定しているものと推測されます。

未成年者が古物営業をするときの注意点

上記の例外に該当し、未成年者が古物商許可を取得して古物営業をするときには、登記をしなければなりません(商法5条)。

また、未成年者本人が営業所の管理者となることはできませんので、別に最低1人管理者が必要になります。営業所の要件については稿を改めて詳説します。

+α 営業所の要件について

七  営業所又は古物市場ごとに第十三条第一項の管理者を選任すると認められないことについて相当な理由がある者

7号を飛ばしましたが、これは許可を申請する者自身の要件というよりも「営業所」の要件です。古物営業法4条の許可の基準には書いてありませんが、重要な要件なので、改めて別の記事で解説します。
最後までお読みいただきありがとうございます
この記事が参考になりましたならば幸いです。
ご不明な点、ご相談、ご依頼のある方はお気軽にお問い合わせください。(初回相談無料)

【松葉会計・行政書士事務所】
担当行政書士:松葉 紀人

お電話:(0863)32-3560

お問い合わせフォームはこちら

◆脚注◆

  1. 免責されると、いわゆる「借金がチャラ」になります。
  2. 正確には、破産後7年を経過する前でも、裁判所の裁量によって免責許可が下りることがあります(破産法252条2項)。
  3. 例えば「懲役1年、執行猶予3年」であれば、執行猶予期間中の3年間は許可を得ることができませんが、執行猶予期間の3年を満了すれば、5年の経過を待つことなく、直ちに許可を得ることができます。
  4. 日本法における刑罰は重いものから順に「死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び過料」があります。ですから、死刑も「禁錮以上の刑」に該当しますが、まず問題になるケースはないでしょう。
  5. 列記すると、無許可営業・名義貸しの罪(古物営業法31条)、背任罪(刑法247条)、遺失物横領罪(刑法254条)、盗品有償譲受け罪など(刑法256条2項)です。
  6. 厳密に言えば、青切符を切られて支払うお金は「反則金」であり、「罰金(刑罰)」ではありません。
  7. 20歳未満の者です。成人年齢の引下げによって2022年4月1日以降は18歳未満の者となります。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る