古物商の営業所にできるのはどこ?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

古物商の許可を取るために申請書を書こうと思ったら、「営業所」について書く紙があったのだけど……

「営業所」って何

自宅を営業所にしていいの?マンションだけど大丈夫?バーチャルオフィスやレンタルオフィスは?営業所として届出していい場所としちゃいけない場所はどこなの?

古物営業について定める古物営業法を読んでみても、「営業所」の要件を直接書いた条文はありません。そこで、営業所に関する義務を規定する条文から、その要件を読み解く必要があります。

古物営業法の定める営業所の要件について、Q&A方式で解説していきます。

※一般的なケースについて解説していますが、都道府県によって取扱いが異なる場合があります。ご自身で申請される場合は、必ず管轄の警察署に相談してください。

Q1.営業所ってどんな場所?

A.古物の営業=古物の売買をする場所です。

逆に言えば、営業所以外の場所で古物営業をすることはできません。買取相手の住所・居所を除けば、営業所以外の場所で古物の買取や交換(レンタル)をすることはできないからです(14条)。

そして、営業所ごとに古物営業を適正に実施するための「管理者」を置き、古物商であることを示す標識を表示する義務があります(12条、13条)。

「管理者」は、未成年者がなれない他は、前回の記事で書いた古物商許可の要件を満たす人であれば、誰でもなることができます 1。許可申請者本人が管理者を兼ねることも可能です。

また、古物の買取を記録する帳簿(税務で必要となる会計帳簿とは別のものです)を保管する場所でもあります(18条)。

犯罪予防の必要などから、営業所に、警察官による立ち入り調査が入ることもあります(22条)

Q2.絶対に営業所は必要?

A.ほとんどの場合は営業所が必要です。不要な場合はごくごく一部の例外だけです。

第3条 前条第2項第1号に掲げる営業を営もうとする者は、営業所(営業所のない者にあつては、住所又は居所をいう。以下同じ。)が所在する都道府県ごとに都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。

「条文を読むと、営業所が不要な場合もありそうだ。ネットで売買するだけだし、警察の立入り調査を受けたくないから、営業所なしを選択したい!」

という方もいると思いますが、警察署に行くと「営業所あり」を選択するように言われると思います。

「営業所なし」が想定しているのは、特定の拠点に留まることなく、全国を回りながら古物売買をする行商 2のような営業形態です。

通販業者に委託してネット上で古物売買をするのみで、自らが在庫を持たない場合でも、拠点とする営業所があるので、「営業所あり」として申請する必要があります。

営業所は営業のためだけの場所ではなく、帳簿が保管され、業務責任者たる管理者がいて、営業の実態を確認できる場所なので、簡単に「営業所なし」で許可を取ることはできないのです。

Q3.自宅でも営業所にできる?

A.自宅でも大丈夫です。営業所にすることができます。

管理者が最低1人いて、営業帳簿の保管ができる場所であれば問題ありません。

他の許認可の要件にあるような居住区画と営業区画の分離・独立性などは要求されていません。

ただし、親の持ち家など、申請者自身の所有でない場合には、所有者の使用承諾書が必要な都道府県があります。

また、賃貸住宅やマンションの場合には、別の考慮が必要です。

Q4.賃貸住宅/マンションだけど大丈夫?

A.賃貸住宅やマンションでも大丈夫ですが、営業目的で使用できるか確認が必要です。

賃貸住宅やマンション・集合住宅の場合、「営業目的での使用を禁止する」という契約であったり、管理規約があることが多いです。

賃貸住宅を営業所にする場合、申請書と一緒に賃貸借契約書のコピーを提出する必要がありますが、「営業目的での使用禁止」の文言がある場合には、さらに建物所有者の使用承諾書面が必要になります 3

またご自身で所有するマンションであっても、マンション管理規約などで同様の規程があるときには、管理組合などの使用承諾書を提出します 4

Q5.バーチャルオフィスやレンタルオフィスは?

A.物理的な実体のないバーチャルオフィスは不可。レンタルオフィスは、物理的な独立性が確保できていれば可。

バーチャルオフィスとは、住所や電話番号、FAX番号などをレンタルできるサービスです。

場所を借りることなく、連絡先のみを使用できるので、安上がりで自宅の住所を公開する必要がない等のメリットがありますが、「営業の実態を確認するための場所」である営業所として申請することはできません。

 

https://inqup.com/virtual-office

他方、レンタルオフィスは個別のケースによって異なります。

大部屋を簡易なパーテーションで区切っただけのものや、1人1室与えられるところもあり、一概に営業所の可否を判断することはできません。

しかし、法律で規定された営業所の役割から、適切に帳簿の管理や営業ができるような、他の事業者の区画と物理的に独立した構造を備えた場所であれば、申請できる場合もあると思われます。

営業所の見取り図を要求される場合もあるので、申請前に見取り図を持って相談するのがいいと考えます。

◆レンタルオフィス

各種業務を行う際に必要となる椅子やデスク、FAX、インターネット環境などが完備された貸事務所(出典:Wikipedia

Q6.自宅を営業所にして、住所が公開されたりしないの?

A.営業所の住所が公開されることはありませんが、インターネットを利用して売買する場合は注意が必要です。

例えば、建設業許可では許可業者の名称(氏名)・営業所の住所を誰でも検索することが可能ですが、古物商許可業者の氏名・住所などは公開されません。

ですから、安心して自宅の住所を営業所として申請することができます。

ただし、インターネットサイトを利用して古物売買をする「通信販売」に該当する場合は住所を公開しなければなりません

インターネットサイトで商品を広告して電話やメールなどで購入申込みを受付ける取引は、特定商取引法の「通信販売」に該当し、サイト上に氏名・住所・電話番号などを表記する義務があります。

これはネットオークションを利用する場合も同様です。

したがって、「通信販売」に該当する場合に自宅を営業所にすると、自宅住所をネット上に公開するリスクを負うことになりますので、申請の前によく検討しておきましょう 5

※通信販売に該当するか否かは個別のケースで異なります。気になる方は消費者庁HPで確認するか、ご相談ください<ref>参考条文:特定商取引法2条2項、11条</ref>

◆参考:特定商取引法ガイド

Q7.中古自動車販売業をしたいけど、何か特別な要件は必要?

A.自動車を駐車する駐車場が必要となる可能性があります。

「自動車を買い取って売る自動車販売業をします!」
「買い取った車はどこに置くの?」
「考えてませんでした……」

買い取った自動車の駐車場があるかないか、きちんと車庫証明を取れる場所か否かの確認をされることがあります。ちゃんとした保管場所がなければ違法駐車をされるかもしれないからです。

そこで、中古自動車販売業においては予め駐車場を確保した上で申請に臨むのが原則です。

「取引はネット上のみで行い、現物は陸運業者などが保管している」等の事情があれば、駐車場がなくとも問題ない場合もありますが、都道府県によっても取扱いが異なるので、事前に所轄警察署にお問い合わせください。

おわりに

簡単なようで意外と考えることが多い営業所。

後から変更することもできますが、後悔してからでは遅いので、きちんと検討してから申請を行いましょう。

最後までお読みいただきありがとうございます
この記事が参考になりましたならば幸いです。
ご不明な点、ご相談、ご依頼のある方はお気軽にお問い合わせください。(初回相談無料)

【松葉会計・行政書士事務所】
担当行政書士:松葉 紀人

お電話:(0863)32-3560

お問い合わせフォームはこちら

◆脚注◆

  1. ただし、取り扱う古物が不正品かどうか判断できる知識・技術・経験を身につける努力義務があり、営業責任者として不適当だと判断された場合には辞めさせるよう勧告されたりします(13条参照)。
  2. 古物営業法における「行商」とは異なります。
  3. 都道府県によって取扱いは異なります。ご自身で申請される場合は、必ず管轄の警察署で確認をしてください。ただ、承諾書が不要な場合であっても、トラブルを避けるために事前に家主の承諾を取ることをお勧めします。
  4. これも都道府県によって取扱いは異なりますので、必ず管轄の警察署で確認をしてください。
  5. 特定商取引法の規制は、古物商だけでなく、「販売業者」に該当する者に適用されます。注意が必要です。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

【ご注意】
当サイトのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や妥当性を保証するものではありません。情報が古くなっていることもございます。
当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

【お問い合わせ】

0863-32-3560
【電話受付時間】
平日(月~金) 9:00~17:00
FAX・問い合わせフォームは24時間受け付けております

◆あなたの古物営業許可をサポートします。

【初回相談無料】
 ・自分で申請手続するのが難しい
 ・専門家に一括して頼みたい
 ・書類の作成だけお願いしたい
 そんな時はお気軽にお問い合わせください。
 申請書の作成は全国対応しております!

◆行政書士(担当)
 松葉紀人(まつば のりひと)