現金出品やクレジットカード現金化は違法?犯罪になる?

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クレジットカード
結論
クレジットカード現金化はカード利用規約違反になるだけでなく、犯罪に巻き込まれる危険もあります。絶対にやめましょう。
さらに、カード利用者も現金化に応じた者も、詐欺罪や横領罪、貸金業法違反などの犯罪が成立する可能性があります。

2017年4月下旬、フリマアプリ「メルカリ」で現金が出品されたニュースが話題になりました。

クレジットカードの買い物枠(ショッピング枠)の現金化(いわゆる「クレジットカード現金化」)が目的ではないかと推察され 1、ネット上では「違法だ」「違法ではない」と様々な意見があります。

クレジットカード現金化とはどんなもので、犯罪になるのでしょうか?古物商にも関わりのある問題ですので、その手法とカード利用者・現金化業者に対する法律上の評価について検討・解説をします。

クレジットカード現金化とは?

クレジットカード現金化とは、クレジットカードのショッピング枠を換金目的で利用するものです。

クレジットカードには、買い物代金の後払いに使える「ショッピング」機能とお金を借りる「キャッシング」機能があり、カード会社はそれぞれの利用可能枠を審査して決定しています。ですから、キャッシング枠は残っていなくてもショッピング枠は残っていることがあり得ます。

クレジットカード現金化は、ショッピング枠をキャッシング枠の代わりに使ってしまうものです。

例えば、クレジットカードで5万円の商品を購入した場合、翌月1回払いであれば、翌月にカード会社に5万円を支払います(口座から引き落とされる)。

1月にクレジットカードで5万円の現金を購入した場合、2月にカード会社に5万円支払うことになるので、ちょうど1カ月間お金を借りたようなものです。

5万円の現金を5万5000円で購入すれば、利子5000円で5万円を借りたことになり 2、キャッシング枠限度一杯借りている人でも、さらにお金を借りているのと同じことになるのです。

ショッピング枠とキャッシング枠を別々に審査したことを無意味にして、代金の回収を困難にするおそれのある行為ですから、カード会員規約によって禁止されています 3

クレジットカードには、商品やサービスを購入し、後払いにする「ショッピング」の機能と、お金を借り入れる「キャッシング」の機能があり、それぞれに利用できる金額が設定されています。
「クレジットカードショッピング枠の現金化」とは、本来、商品やサービスを後払いするために設定されている「ショッピング」の利用可能枠を換金する目的で利用することです。
(日本クレジット協会「クレジットカードのショッピング枠の「現金化」の誘いに注意」

クレジットカード現金化の手法としては、①キャッシュバック型(価値不明の商品を買ってキャッシュバックを受ける)と②商品買取型(購入した商品を転売して現金を受け取る)があると言われています(下図参照)。直接現金を買うわけではありませんが、間接的に現金を買っているのと同じことです。

クレジットカード現金化の具体的事例クリックで拡大画像を表示
(日本クレジット協会「クレジットカードのショッピング枠の「現金化」の誘いに注意」より引用)

しかし、キャッシュバックや転売すると言って実際にはお金が振り込まれない事例や個人情報を悪用され、トラブルになっているパターンもあります 4

他にも、③クレジットカードを使って一般のお店で購入した商品を、口座引落し(代金完済)前に転売する方法(単独型)もあります。

クレジットカード現金化は違法?適法?

前述のように、クレジットカード現金化はカード会社の利用規約で明確に禁止されており、違反したカード利用者はカードの利用停止・会員登録抹消・残金の一括請求がされるおそれがあります。

三井住友VISAカード&三井住友マスターカード会員規約(個人用)6条2項
(省略)また、会員は、現金化を目的として商品・サービスの購入などにカードのショッピング枠を使用して はならず、また違法な取引に使用してはなりません。

では、規約違反のほかに、犯罪になることがあるのでしょうか?カード利用者と、現金化に応じる販売者側とに分けて検討します。

カード利用者は違法?

まず、カード利用者の犯罪の成否を検討します。出品者・販売者がクレジットカード現金化の目的を知らない場合と知っている場合とに分けて解説します。

販売者がクレジットカード現金化を知らない場合

最初に、商品の販売者(クレジット加盟店)が現金化取引の意図を知らない場合―③単独型:街の宝石店で貴金属をクレジットカードで購入して、転売してお金にする場合など―を考えます。

詐欺罪のおそれ

クレジットカード現金化の目的で現金や商品を購入すること自体は、カード利用規約違反であっても犯罪(違法)ではないという意見があります。現金化目的で利用しても口座から代金が引き落とされるのであれば、カード支払いを受けた加盟店やカード会社は損をしないからです。

しかし、利用規約違反が発覚すればカード使用停止となり、加盟店はカード会社から代金の支払いを受けられないリスクを負います。

加盟店にとって利用規約違反かどうかは重大な関心事になりますから、その意図を隠して買い物をすることが加盟店を騙して商品を売らせる行為と評価されて詐欺罪(刑法246条)になる可能性があります。

例えば、「カードを他人に利用させてはならない」という利用規約に違反して他人名義のカードを使用した人が詐欺罪になったケース 5もあり、処罰の可能性はゼロとは言えません。

横領罪のおそれ

また、利用規約によりクレジットカードで購入した商品の所有権は、カード会社に代金を全額支払うまではカード会社にあります 6。カード会社に代金を完済するまでは買った人のものにはならないのです。

したがって、カード会社の口座引落しの前に勝手に商品を転売すると、横領罪(刑法252条1項)が成立する可能性があります 7

ただし、カード会社との契約で処分が認められている場合なら問題ありません 8

三井住友VISAカード&三井住友マスターカード会員規約(個人会員用)
第29条(債権譲渡の承諾等)

1項~3項 省略
4.会員は、カード利用により購入した商品の代金債務を当社に完済するまで、当該商品の所有権が当社に帰属することを承諾するものとします。

刑法第252条
1項 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。

販売者がクレジットカード現金化を知っている場合

従来から「クレジットカード現金化」の問題として取り上げられていた、①キャッシュバック型や②商品買取型のパターンです。クレジットカード現金化を行う現金化業者の勧めで行うケースが多いようです。

横領罪のおそれ

前述のように、②商品買取型は代金引落し前に商品を転売するものですから横領罪が成立する危険があります。

詐欺罪のおそれ

①キャッシュバック型は、商品を処分するわけではないので横領罪の余地はありません。

しかし、クレジットカード現金化は、カード会社がショッピング枠とキャッシング枠で別々に行う信用審査を無意味にし、代金回収のリスクを増やす貸金脱法行為です。

ですから、カード会社はクレジット現金化取引を禁止しており、現金化取引に該当するか否かは重大な情報です。それにも拘わらず、現金化取引を正常な買い物であるように装って取引をすることは、カード会社を騙してお金を支払わせるものと評価でき、詐欺罪となる可能性があります。

厳密には、現金化業者がカード会社に代金の支払いを請求する行為がカード会社を騙す行為になるので、カード利用者と現金化業者による共犯 9になると思われます 10

刑法第246条
1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2項  前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

出品者・販売者は違法?

クレジットカード現金化の目的で現金の出品をする場合や、①キャッシュバック型や②商品買取型の方法で商品を販売する側が違法かどうか、犯罪になるか否かを考えます。

貸金業法違反のおそれ

商品を出品し換金手続を行うことは、需要に応じた取引なので法的には問題ないとする考えがある一方で、実質的にはお金を貸しているのと同じなので貸金業法違反となるおそれ 11が指摘されています。貸金業法を行うには登録が必要ですが、登録せずに営業した罪になります。

貸金業法第47条  次の各号のいずれかに該当する者は、10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(1号省略)
2号  第11条第1項(筆者注:第3条第1項の登録を受けない者は、貸金業を営んではならない。)の規定に違反した者

出資法違反のおそれ

出品額と実質の購入代金の差額(利益)によっては金利の上限を定めた出資法に違反し、高金利罪が成立する可能性があります。

出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律5条(高金利の処罰)
1項 金銭の貸付けを行う者が、年109.5%(2月29日を含む一年については年109.8%とし、一日当たりについては0.3%とする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をしたときは、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。
2項 前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年20%を超える割合による利息の契約をしたときは、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。
3項 前二項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年109.5%(2月29日を含む一年については年109.8%とし、一日当たりについては0.3%とする。)を超える割合による利息の契約をしたときは、10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。

その他の共犯となるおそれ

さらに、前述のカード利用者の共犯として①キャッシュバック型では詐欺罪②商品買取型では詐欺罪及び横領罪が成立することもあり得ます。そして、カード代金完済前の商品(横領品)であることを知りながらその商品を買い取る行為は、さらに重い盗品有償譲受罪となります。

刑法第256条
1項 盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処する。
2項 前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処する。
未使用の商品(新古物)も古物ですから、買取は古物商の専門領域です。カード現金化の意図を知りながら協力すれば古物商にも犯罪が成立しますので、絶対に関わらないことが必要です。

クレジットカード現金化をやったら処罰される…?

2017年4月時点では、現金化業者が出資法違反などで処罰されたケースはあるものの、カード利用者が処罰された事件はないようです(個人的に調べた限りなので、漏れがあれば申し訳ありません)。

理由としては、詐欺罪の証明は難しいこと 12や、悪質な業者が介在しており実質的にカード利用者も被害者であることが多い、代金の支払いさえきちんとなされていればカード会社は損をしていないから、などが考えられます。

ただし、今後もカード利用者が処罰される可能性がないとは言えませんし、明確にカード現金化を犯罪とする新しい法律ができるかもしれません。

安易な気持ちで手を出して取り返しのつかないトラブルに巻き込まれないためにも、クレジットカード現金化は絶対にやめましょう。

参考にした文献・サイト

  
・wikipedia「クレジットカード現金化

・「クレジットカードのショッピング枠の現金化」(政府広報オンライン)
https://www.gov-online.go.jp/tokusyu/201203/syohisya/credit.html
⇒2017/6/1リンク切れを確認

・「クレジットカードのショッピング枠の「現金化」の誘いにご注意ください」(日本クレジット協会)
https://www.j-credit.or.jp/customer/attention/attention_05.html

・「現金のネット出品に揺れる メルカリやヤフオクが対策」日本経済新聞電子版(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ25HC2_V20C17A4000000/

・「メルカリ『現金販売』で問題視される『クレカの現金化』手法、法的問題は?」弁護士ドットコム
https://www.bengo4.com/internet/n_6002/

・社団法人日本クレジット協会クレジット研究所「クレジットカードのショッピング枠の現金化に係る刑法研究会取りまとめメモ(pdfファイル)

◆脚注◆

  1. クレジットカード現金化の他にも、アプリ内通貨の換金や銀行口座を介さずに収入を得る手段として利用されているという指摘もありますが、詳細の検討は省きます。
  2. 厳密には現金書留や出品手数料などがあるので、全額が利子として出品者に入るわけではないでしょうが。
  3. ショッピング枠は割賦販売法、キャッシング枠は貸金業法、とそれぞれ別の法律によって規制されています。例えば、キャッシングは年収の3分の1までしか借りられないという総量規制があります(貸金業法13条の2)。このように別々の規制に掛かるので審査も別々に行われるのです。
  4. 国民生活センター「クレジットカードの現金化」(2018年8月5日エラーのためリンク削除)などを参照。
  5. 最決平成16年2月9日民集58巻2号89頁。この事件ではカード名義人やカード会社ではなく加盟店(カードで支払いを受けたお店)が被害者とされ、仮にカードの名義人から使用を許されていたとしても本件詐欺罪の成立は左右されないと判断しています。口座に残高がなく支払える見込みがないのに自己名義のクレジットカードを使用したことが詐欺罪に問われた事例(福岡高判昭和56年9月21日刑月13巻8=9号527頁、東京高判昭和59年11月19日判タ544号251頁など。)も参照。
  6. 割賦販売法7条も参照。
  7. 自動車販売会社に所有権が留保されている自動車を、金融業者に対して借金の担保として提供したことが横領罪に該当するとされた事例があります(最決昭和55年7月15日判時972号129頁)。なお、未払いの残金がわずかである場合には保護の実質が希薄なため横領罪の成立が否定されるという見解もあります。
  8. 所有権留保は、代金が完済されなかったときにカード会社が商品を換金して代金を回収することが目的なので、ほぼ換金の余地がない食べ物などであれば食べたからと言って横領にはならないと考えます。
  9. カード利用者と現金化業者が意思の連絡を通じて不法実現に不可欠な行為を分担しているので、共同正犯(刑法60条)になると考えます。
  10. 現金化業者が事情を知らない加盟店を介した場合(カード利用者に街の電器店でパソコンを購入させて、業者が買い取る場合など)には、加盟店に対する詐欺罪となるでしょう。構造としては前述の無資力者の自己名義クレジットカード使用詐欺(福岡高判昭和56年9月21日刑月13巻8=9号527頁、東京高判昭和59年11月19日判タ544号251頁など。)と同じです。なお、カード会社に立替金を請求するシステムによっては電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)になります。
  11. 「クレジットカードのショッピング枠の現金化」に関する意見書(東京弁護士会 (2011年2月8日))
  12. 具体的には、カード現金化が発覚しない、カード利用時点で現金化目的があったことを証明するのが難しい、クレジットカード契約上処分が許されている場合との区別が困難であることなどが挙げられます。
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