買い取った古物が盗難品だった!警察への協力義務は?

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「お客から買い取った古物が盗難品だった!」

「僕の盗まれた自転車がお店で売られている!無料で返してくれ!」

古物商がどんなに盗難品を買い取らないように気を付けても、いつの間にか盗難品が紛れ込む可能性をゼロにすることはできません。

万が一、盗難品を買い取ってしまったとき何をすればいいのでしょうか?

本記事では、古物商の警察への協力義務について解説します。

被害者への返還義務の有無については、こちらの記事を参照。

 

盗難品だと気付いた!まず何をする?

古物商には、買い取ろうとする古物に盗難品など不正品の疑いがあれば、買取りを中止して、直ちに警察官に通報しなければならない申告義務があります。

この申告義務に違反すると、営業停止などの行政処分が下されることがあるだけでなく、被害者から損害を賠償するよう請求されるおそれもあります。

買い取った後に盗難品だと気付いた場合も、そのまま保管したり売却することなく、直ちに警察に通報する義務があると考えられます 1

古物営業法15条3項
 古物商は、古物を買い受け、若しくは交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けようとする場合において、当該古物について不正品の疑いがあると認めるときは、直ちに、警察官にその旨を申告しなければならない。

警察から盗難品だと言われた!どうすればいい?

警察から盗難被害品リストをもらったときは?

警察から、窃盗などの被害品リストが書かれた書面(盗品手配書・品触書)を渡され、リストにある被害品があれば届け出るよう依頼されることがあります。これを品触れ(しなぶれ)と言います。

古物商は、品触書を受け取ったときは、受け取った日付を記載した上で6カ月間保存します。そして、リストに記載された品物が持ち込まれたり、所持していた場合には直ちに警察に届け出る義務があります。

品触れは地域一帯の古物商に網羅的にされることがあります。「この古物商は怪しい!」と疑われて警察が来るわけではありません 2ので、盗品流通防止のためにも安心して協力しましょう。

なお、品触れに協力せずに品触書を捨てたり、わざと届出をしなかったりすると懲役や罰金、営業停止処分を受けるおそれがあります 3

古物営業法19条(品触れ)
 警視総監若しくは道府県警察本部長又は警察署長は、必要があると認めるときは、古物商又は古物市場主に対して、盗品その他財産に対する罪に当たる行為によつて領得された物の品触れを書面により発することができる。
  古物商又は古物市場主は、前項の規定により発せられた品触れを受けたときは、当該品触れに係る書面に到達の日付を記載し、その日から六月間これを保存しなければならない。
3~4  (省略)
5  古物商は、品触れを受けた日にその古物を所持していたとき、又は第二項若しくは前項の期間内に品触れに相当する古物を受け取つたときは、その旨を直ちに警察官に届け出なければならない。
6~7  (省略)

警察から古物の差止めを受けたら?

警察から「その商品は盗難品の疑いがあるから差し止める!」と差止めを受けることもあります。

差止めを受けた古物は、差止め期間中、販売したり廃棄したりせず保管しなければなりません。古物を売った人から買戻しを要求されたり、販売の委託を受けて預かったものであっても返すことはできません。

保管義務に違反すると、懲役や罰金、営業停止処分のおそれがあります 4

古物営業法21条(差止め)
古物商が買い受け、若しくは交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けた古物について、盗品等であると疑うに足りる相当な理由がある場合においては、警察本部長等は、当該古物商に対し三十日以内の期間を定めて、その古物の保管を命ずることができる。

その他の協力義務について

他にも、警察官が捜査の一環として古物商に対して古物や帳簿の調査や質問をすることがあり、古物商はそれに協力する義務があります。

ただし、帳簿の記載事項は個人情報ですから、相手が警察官であっても無闇に提供することは許されません。警察手帳の提示や令状の提示があるか等、法令に基づく捜査や調査として行われているか確認した上で協力することが必要です。 5

古物台帳をきちんと作成していないと、この調査の過程で発覚して行政処分を下されるおそれもあります。いつ来ても問題ないようにきちんと取引の度ごとに記録しておきましょう。

古物台帳の作成義務についてはこちらの記事も参照。

 

個人情報保護法23条(第三者提供の制限)
1 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
 一  法令に基づく場合
(以下省略)

古物営業法22条(立入り及び調査)
 警察職員は、必要があると認めるときは、営業時間中において、古物商の営業所、古物の保管場所、古物市場又は第10条第1項の競り売りの場所に立ち入り、古物及び帳簿等を検査し、関係者に質問することができる。
2  前項の場合においては、警察職員は、その身分を証明する証票(注:警察手帳など)を携帯し、関係者に、これを提示しなければならない。
3  警察本部長等は、必要があると認めるときは、古物商、古物市場主又は古物競りあつせん業者から盗品等に関し、必要な報告を求めることができる。
4  省略
最後までお読みいただきありがとうございます
この記事が参考になりましたならば幸いです。
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【松葉会計・行政書士事務所】
担当行政書士:松葉 紀人

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◆脚注◆

  1. 条文では「古物を買い受け…ようとする場合」とありますが、古物営業許可の盗品流通防止目的や古物取扱いの専門家としての責任を考えれば、買取時だけに限定されるものではないと考えます。
  2. もちろん犯罪に関与している人のところには疑われて来ることもあるでしょう。
  3. 24条:営業停止処分。33条:6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金。
  4. 24条:営業停止処分。33条:6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金。
  5. たとえ警察官の指示に従っても、注意を尽くすことなく漫然と違法な指示に応じたならば自分の責任となってしまいます。
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