買い取った古物が盗難品だった!持ち主に返還しなきゃダメ?

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「お客から買い取った古物が盗難品だった!」

「僕の盗まれた自転車がお店で売られている!無料で返してくれ!」

古物商がどんなに盗難品を買い取らないように気を付けても、いつの間にか盗難品が紛れ込む可能性をゼロにすることはできません。

万が一、被害者を名乗る人から「盗まれた物だから返せ」と言われたらどうすべきでしょうか?

返す義務があるのか、返すとしても代金を賠償してもらえるのか?

古物商の立場から、法律上のルールについて解説していきます。

警察への協力義務については下記の記事を参照。

 

元の持ち主から返還請求されたときは?

古物を持ち主に引き渡さなければならないのかは、まず盗難品 1だと分かる可能性があったかどうかで結論が分かれます。

買取時に盗難品だと分かっていた・注意すれば分かった場合

古物を買い取る時に、盗難品だと知って買っていた場合や注意深く行動すれば盗難品であると気づくことができた場合には、被害者に無償で盗難品を返さなければなりません 2既に転売や廃棄して返還できないときはお金で賠償しなければならないこともあります 3

注意深く行動すれば気づくことができた場合とは、【買取希望者が挙動不審であった】り、【未成年者が大量の宝飾品を売りに来たのに特に何の確認をしなかった】ときだけでなく、【本人確認義務を怠った】場合や、【特に調査すべき事項があったのにそれを怠った場合 4】も含まれます。

注意しても盗難品だと分からずに買い取った場合

盗難品であることを知らず、注意を尽くしても盗難品だと分からずに買い受けた場合には、原則として買い取った古物は古物商のものになり、元の持ち主に返す義務はありません 5

民法192条(即時取得)
 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

ただし、以下のように例外的に持ち主に返さなければならないケースがあります。

他の古物商等から購入したとき

古物商が、盗難物であることを知らずに公の市場(他の古物商の店舗や古物市場など)や、他の古物商から購入した物は、盗難から1年以内に持ち主から請求されたならば無料で返さなければなりません 6

また、1年を超えても2年以内であれば返さなければなりませんが、持ち主からその物の購入代金を弁償してもらうことができます 7。古物商が5万円で仕入れて、15万円で販売している場合、持ち主が5万円を支払ったならばその物を返さなければなりません 8。通常、一般の店舗で購入する商品が盗難品だとは思いませんし、購入代金には物自体の価値だけでなく店舗の利益等も含まれているので、購入代金を弁償してもらう権利があるものと考えられます。

盗難から2年を超えている場合や、請求を受けたときに既に盗難物を売却や廃棄していた場合には、古物商は返還する義務も賠償義務も負うことはありません 9

古物商からではなく、一般の人から購入したとき

古物商等ではなく、一般の個人や会社から買い取った盗難物は、盗難から2年以内に持ち主から請求されたならば無料で返さなければなりません

他の古物商から購入するのとは異なり、自分で盗難物か否か見極めるべきですし、負担する買取代金も物自体の価格だけですから自分で責任を取るべき範囲だと考えられるからです。

2年を経過した後であれば、請求があっても返還する義務はありません。

古物営業法20条(盗品及び遺失物の回復)
 古物商が買い受け、又は交換した古物のうちに盗品又は遺失物があつた場合においては、その古物商が当該盗品又は遺失物を公の市場において又は同種の物を取り扱う営業者から善意で譲り受けた場合においても、被害者又は遺失主は、古物商に対し、これを無償で回復することを求めることができる。ただし、盗難又は遺失の時から1年を経過した後においては、この限りでない。
民法193条(盗品又は遺失物の回復)
 前条(注:192条の即時取得)の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
民法194条
 占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。

その他の注意点

法律上のルールと当事者の合意

持ち主から返還請求された場合の法律上のルールについて解説しましたが、以上はあくまでも古物商と持ち主との間で合意がない場合にどうすべきかというルールです。当事者同士の交渉で合意すれば、別の方法を採ることも可能です。

本当にその人に返してもいい?

持ち主を名乗る者が本物の持ち主なのか分からない場合は、被害届を提出しているか確認するなど警察の協力を求めるべきでしょう。きちんと確認せずに他人に返還してしまうと、後で本物の持ち主から賠償請求されるかもしれません。

窃盗犯人に弁償してもらえるか?

古物商がせっかくお金を出して買った古物を、無償で持ち主に返さなければならない場合、古物を買ったときのお金は窃盗犯人に弁償してもらうことができるでしょうか?

結論から言えば、法律上、窃盗犯人に弁償してもらうことはできます 10。購入代金だけでなく、その後の保管・管理費用や損害も支払ってもらうことは可能です。

しかし、犯人がどこの誰だか分からない場合や、犯人が分かってもお金を全く持っていなければ、弁償してもらうことはできません。警察も犯人逮捕には尽力してくれますが、弁償を強制する権限がありません。

つまるところ買い取った後にどうするか考えるよりも、買取の際に注意を払うことが肝要ということです。

まとめフローチャート

最後までお読みいただきありがとうございます
この記事が参考になりましたならば幸いです。
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【松葉会計・行政書士事務所】
担当行政書士:松葉 紀人

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◆脚注◆

  1. 盗まれた物だけでなく落とし物も含みます。
  2. 即時取得(民法192条)が成立せず、古物の所有権を取得することができないので、元の所有者に返還する義務があります。
  3. 不法行為(民法709条)や不当利得返還請求(民法703条)。
  4. 土木建設機械は所有権留保型のローン購入が多いことを知っていた古物商が建設会社から建設機械を買い受けるときには、売主に所有権があるか調査すべきであり、それをしなかった場合には過失がある(古物商は機械の所有権を取得できない)とされた判例があります(最判昭和42年4月27日判時492号55頁)。ただし、これは調査すれば容易に所有権の有無が分かった事案なので、調査に相当の時間とお金を要する場合には当てはまらないと考えられます。
  5. 民法192条:即時取得。いつ持ち主から「返せ」と言われるか分からないとすると安心して取引ができません。そこで注意しても他人の物だと分からずに取引で入手した場合には、入手した人の物となるというルールです。なお、家や土地などの不動産や登録済自動車などの取引にはこのルールは適用されません。
  6. 古物営業法20条:古物商が買受人である場合の特則です。古物商の専門家責任を重く見ただけでなく、古物商の間での盗品たらい回しを防止した規定であると考えられます。なお、買受人が古物商以外の人であれば、盗難から2年間は、返還の際に購入代金を弁償してもらう権利があります。
  7. 民法193条、194条。
  8. 「15万円で販売しているのだから、せめて10万円は支払ってもらわなければ返さない」と言うことはできません。ただし、購入した物を修理することで価値が大きく上がった場合には修理代金相当額の支払いを要求できる可能性があります(民法703条:不当利得返還請求)。
  9. 最判昭和26年11月27日民集5巻13号775頁を参照。
  10. 民法708条:不当利得返還請求、または709条:不法行為。
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