古物商の本人確認1~平成28年10月改正GK法との比較

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犯罪による収益の移転防止に関する法律(通称:ゲートキーパー法。以下では省略して「GK法」と表記します。)が改正されて、平成28年10月から取引時の本人確認(法令上は「取引時確認」ですが、以下では馴染みやすい「本人確認」という言葉を使います)の方法が変わりました。

GK法によると、一定の事業者は、取引の際にお客さんの本人確認をする義務があります。銀行口座を開設するときに運転免許証の提示を求められたり、口座の開設目的を聞かれたりするのもこの法律に基づくものです。

今回の改正点を簡単に言えば、以前は顔写真のない証明書(健康保険証など)だけで本人確認ができましたが、10月からはそれに加えて他の証明書や転送不要郵便などで確認する義務が追加されました。

古物営業法でも、古物商には古物買取時に本人確認をする義務があると決められていますが、両者はどういう関係にあるのでしょうか?

本人確認義務について、それぞれの法律で「誰が」「いつ」「どんな方法で」義務を負うのか、簡単に説明していきます。

古物商はGK法の義務を負う?

そもそも古物商は、GK法の定める本人確認義務を負うのでしょうか?

GK法では、「特定事業者」が行う「特定業務」のうち「特定取引等」に限って、本人特定事項等氏名・住居・生年月日など。詳細は後述しますの確認をする義務を負います。

「特定事業者」には、銀行やクレジットカード事業者、行政書士を含む士業などがありますが、古物商と関係あるものを挙げると、宝石や貴金属を売買する業者(特定事業者) 1がこれに該当し、GK法に基づく義務を負います 2

宝石・貴金属を取扱う古物商が古物営業法とGK法の両方の義務を負い、それ以外の古物商や取引では古物営業法の義務のみを負います。

本人確認義務の有無
古物営業法
GK法
貴金属等
取扱古物商
その他の
古物商
×

古物営業法とGK法の相違点

どんなときに本人確認の義務がある?

事業者に本人確認義務があるといっても、どんな取引をするときでも確認しなければならないわけではありません。

古物営業法の本人確認義務

古物営業法によると、古物商は、1万円以上の古物の買取時に本人確認をする義務があります。ただし、バイク(部分品を含む)・ゲームソフト・書籍、CD、DVD等のメディアは、買取金額に関わらず本人確認する必要があります。

義務を負うのは古物を買取るときだけで、買い取ったものを売るときには確認の義務はありません。

GK法の確認義務

GK法では、200万円を超える現金による宝石・貴金属の売買(特定取引等)をするときに、本人確認をする義務を負います。

古物営業法と異なる点は、

(1)200万円を超える宝石・貴金属(製品)のみ

(2)支払いの手段が現金である場合のみ

(3)売買をするとき

の3点です。

(1)200万円を超える宝石・貴金属(製品)の取引のみがGK法の対象となります。貴金属商であっても、200万円以下の商品や時計など貴金属類以外の商品である場合には対象とはなりません(時計に貴金属が使われている場合は適用になります)。

(2)クレジットカードや銀行振込みではなく、支払い手段が現金であるときだけが対象です。

(3)古物営業法では買取時のみでしたが、GK法では商品を売る時も買う時も対象となります。

何を確認するのか?

次に、「本人確認」と言っても相手の何を確認すればいいのでしょうか?

古物営業法の確認事項

古物営業法には古物を買受けるときには「相手方の住所、氏名、職業及び年齢」を確認する義務があると規定されています(古物営業法15条)。

年齢は生年月日と考えて問題ありません。

GK法の確認事項

古物営業法と同じく氏名・住居(本人特定事項。「住居」は住所と同じと考えて差し支えありません)、生年月日、職業の確認義務があります。

それに加えて、「取引の目的」 3も確認する必要があります(個人の場合:GK法4条1項)。

「ハイリスク取引」(なりすまし取引のおそれがある場合など)に該当するときは、相手の資産及び収入の状況を確認します。

本人確認の方法は?

古物営業法による確認の方法

本人確認の方法は主に3つあります。

(1)身分証の提示を受けて確認する

(2)相手方以外の者に問い合わせて確認する

(3)面前で住所・氏名・生年月日を書いてもらって確認する

(1)身分証の提示については、「身分証明書、運転免許証、保険証等相手方の身元を確かめるに足りる資料の提示を受けて確認する」と規定されているのみで、具体的な書類の種類については限定されていません。事業者の判断に委ねられています。

GK法と古物営業法とは別の法律ですから、顔写真のない証明書であれば必ず補完書類が必要となるわけではありません。

取扱商品や金額によっても異なりますが、古本屋やリサイクルショップの買取などであれば、保険証などの公的な身分証であれば、十分に本人確認義務を果たせると考えてよいかと思います。

古物営業法施行規則第15条

法第15条第1項第1号 の規定による確認は、身分証明書、運転免許証、国民健康保険被保険者証等相手方の身元を確かめるに足りる資料の提示を受け、又は相手方以外の者で相手方の身元を確かめるに足りるものに問い合わせることによりするものとする。

GK法による確認の方法

取引の相手方から身分証の提示を受けて、本人確認をします。

顔写真付きの証明書を提示された場合は、その証明書で本人確認をします(平成28年10月前後で変更はありません)。

前述の通り、顔写真のついていない本人確認書類の提示を受けたときは、その書類だけではなく、転送不要郵便や他の本人確認書類(補完書類と言います)の提示を受けて、本人確認をする義務を負うようになりました(平成28年10月以降)。

平成28年10月以前は、健康保険証や国民年金手帳、母子健康手帳など、顔写真がなくても公的証明書であれば、単体で本人確認書類として使うことができました 4

しかし、平成28年10月以後は、顔写真のついていない公的証明書の場合は、一律で補完書類が必要となります

 
本人確認書類の例
必要な書類・方法
A
・運転免許証
・運転経歴証明書
・在留カード
・特別永住者証明書
・マイナンバーカード
・旅券(パスポート)
など顔写真付きのもの
いずれか1つ
B
・各種健康保険証
・国民年金手帳
・母子健康手帳
・取引に使用する印鑑の
 印鑑登録証明書
いずれか1つ
+B・Cの中から1つ
(最低2つ必要)
C
・印鑑証明書(B以外)
・戸籍謄本・抄本
・住民票の写し
 など顔写真のない証明書
(個人番号通知書を除く)
書類記載の住所に
書留などを利用して
転送不要郵便物で
送付して確認

「前は保険証だけあれば大丈夫だったから」と思っていると、認められないことになりますのでご注意を。

確認義務を怠った場合にはどうなる?

本人確認義務がある取引なのに、その確認を行わなかった場合にはどうなるのでしょうか?

古物営業法の罰則

古物取引の場合は、古物営業法33条1号により、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金(あるいはその両方(36条))が科されます。さらに法人の役員や従業員が確認義務違反をしていた場合には、本人だけでなく、法人にも30万円以下の罰金が科されます。

GK法の罰則

GK法の確認義務を怠ったときは、まずは是正命令(GK法17条)が課され、きちんと本人確認をする体制を整えるように指導されます。

その命令に従わなかったときに、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金(あるいはその両方)が科されることになります。さらに法人の役員・従業員等が命令違反をした場合には、法人にも3億円以下の罰金刑(19条)が課されます。

まとめ

古物営業法とGK法で本人確認が必要なとき、確認する内容、確認に必要な書類の違いを説明してきました。

「うちは小さいお店だから大丈夫」と油断していると、急に大きな取引が舞い込んでくる場合もあります。

突然の取引にも慌てることなくお客さんに説明して、きちんと義務を果たせる仕組みを用意しておきましょう。

もし不安な点がありましたら、お気軽にご相談ください。

補足:なぜ規制内容が違うのか?

古物営業法と犯罪収益移転防止法では法律の目的が違うからです。

古物営業法は、主に盗品などの不正品売買を規制することで犯罪を防止することが目的でした。

なぜ古物の売買に許可が必要なのか?

それに対して、犯罪収益移転防止法は、麻薬などの不正取引で得られた利益を、銀行口座の転々移転や不動産・貴金属の購入・換金などによって、お金の出所や所有者を分からなくさせる行為(マネー・ロンダリング)を防止し、テロなど犯罪組織の資金源を断つことを目的としています。

古物営業法は物の出所をハッキリさせたいので古物の買取時に目を光らせ、GK法はお金の出所を明確にしたいので、多額の現金や換金しやすい貴金属等の取引を対象にしているわけです。

◆脚注◆

  1. 「この法律において「特定事業者」とは、次に掲げる者をいう。…金、白金その他の政令で定める貴金属若しくはダイヤモンドその他の政令で定める宝石又はこれらの製品(以下「貴金属等」という。)の売買を業として行う者」(犯罪収益移転防止法2条2項40号)
  2. 古物商でなくとも、宝石・貴金属取扱商は特定事業者に該当し、GK法の義務を負います。誤解なきよう。
  3. 銀行口座を開設するときに開設目的を聞かれるのは、銀行にこの法律上の確認義務があるからです。
  4. 補完書類を提示してもらうルールを作っていた事業者や事業団体もありましたが、法律上の義務ではありませんでした。
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