手紙や領収書など「信書」を宅配便で「合法的に」送る方法

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2017年10月現在、手紙や領収書などの「信書」を、郵便ではなく宅配便で送ることは法律で原則禁止されています。違反すると、宅配業者だけでなく送った人にも罰則があります。

しかし、通販で購入した商品の段ボール箱には一緒に領収書が入っていますし、贈答品に挨拶状を同封してあるのを見る機会もあるでしょう。

実は、それらの文書を宅配便で送ることが【適法なケース】と【違法なケース】があるのです。

古物取引でも商品に領収書や納品書を付けて送ったり、身分証のコピーを買取商品と一緒に送ってもらったり、信書を取扱う機会は少なくないです。

古物商自身が違法行為をしないだけでなく、お客さんに違法行為をさせないためにも適法・違法の境界線をきちんと理解しておきましょう。

参考サイト:総務省「信書の送達についてのお願い」

信書とは?

信書とは「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」と定義されています 1

一般的には、手紙のほか請求書や領収書、契約書、報告書、履歴書、証明書、受取人が明記されたダイレクトメール等の文書が信書に該当します 2

逆に信書に該当しないものとしては、書籍や商品カタログ、金券、会員証、受取人の記載がないチラシなどが挙げられます 3。これらの文書に記載された内容は、特定の受取人ではなく広く一般に向けたものであったり 4、差出人の意思や事実を表示・通知をするものではないからです。

ただし、全く同じ文書でも送る目的によって信書か否か変わることがあり、信書の該当性は個別の事例ごとに判断せざるを得ません。例えば、学生が会社に送る「履歴書」は、会社に対して就職の意思や経歴等を通知する文書ですから「信書」ですが、会社が本人に送り返すときは会社側の意思や事実を表示した文書ではないので「信書ではない」ことになります。

信書と宅配便に関するルール

原則:信書を宅配便で送ることは違法

若干繰り返しになりますが、信書を、郵便や総務省の許可を受けた信書便事業者 5ではなく、宅配便業者などの運送事業者を利用して送ることは郵便法4条4項で禁止されています 6。違反すると、宅配業者だけでなく送った人も3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます 7

文書や書類であっても、信書ではないものを宅配便で送ることは違法ではありません。

なお、郵便局の配送サービスであっても、信書を送ることができないもの(例:ゆうパック)があります。

参考:郵便局「信書の送付について」

例外:無封の添え状・送り状の荷物同封は適法

例外として「信書」であっても「貨物に添付する無封の添え状又は送り状」は宅配便でも送ることができると法律で規定されています 8。通販の領収書や挨拶状、実家から届いた荷物の箱に手紙が入っていても問題ないのはこの条文があるからです。

適法となる要件は、 ①荷物と一緒に送ること、 ②荷物が主体で信書が付属(従)であること、 ③信書の内容が荷物の送付と密接に関連すること、 ④無封(信書に封をしていないこと)です。

信書が主体でおまけ程度に荷物が同梱されている場合や、贈答品のお菓子に契約書や寄付の依頼書を同封している場合、糊付けした封書に信書を入れている場合 9には、例外に該当せず違法となるおそれがあります。

「添え状・送り状が受取人や運送営業者にとって貨物の点検等を行う場合に有益な文書であり、貨物を送付する際に添付されることが必要と認められることから設けられたものである。したがって、添え状・送り状は、貨物という送付の主体があって、その送付に関する事項が記載された文書が従として添えられる場合に限られるものである。」(総務省「信書に該当する文書に関する指針(平成15年総務省告示第270号)」4頁)

「無封」とは、(1)封筒等に納めていない状態、(2)封筒等に納めて納入口を閉じていない状態のことをいいます。また、封筒等に納めて納入口を閉じている場合であっても、(3)当該封筒等が透明であり容易に内容物を透視することができる状態、(4)当該封筒等の納入口付近に「開閉自由」等の表示(※)をするなど運送営業者等が内容物の確認のために任意に開閉しても差し支えないものであることが一見して判別できるようにしてある状態も「無封」に含まれます。(総務省「信書に該当する文書に関する指針」Q&A集

古物商が信書と宅配便に関して注意すべきケース

以上の信書と宅配便の一般論を踏まえて、古物商が古物取引をするうえで信書の宅配が問題となるケースの一例を紹介します。

本人確認書類を送付してもらうとき

古物商は古物を買い取るときには必ず本人確認をしなければなりません。インターネットや電話での買取依頼など非対面取引をする場合でも同じです。

本人確認の方法の一つとして、「身分証明証のコピー」を買取商品と一緒に宅配してもらう方法があります。

この「身分証明証のコピー」は、依頼者が古物商に対して自分の氏名・住所等を通知するための文書ですから「信書」に該当します。しかし、本人確認は古物買取に必須の手続ですから、買取商品に密接に関連する「添え状又は送り状」に該当するでしょう。

そこで重要になるのは、依頼者に「身分証明証のコピー」を無封で同梱してもらうことです。以下はその対応の一例です。

  • コピーを封筒などに入れないように注意喚起する
  • コピーを段ボール箱に入れる際、荷物の上に見える形で置くよう指示する
  • 買取商品が本であれば、その中の一冊に2つ折りにしたコピーを挟んでもらう

身分証明証のコピーのほか、買取商品の種類・数量・要望等を書いた紙を同封してもらう場合も同様に工夫してください。

なお、「身分証明証のコピーのみ」を送付してもらう場合には、宅配便ではなく郵便など信書便を利用してもらいます。

未買取商品の返品に際して本人確認書類を返送するとき

キャンセルなどで買取依頼を受けた商品を返品する際、送付を受けた身分証明証のコピーの返送を依頼されることもあります 10

その際の「身分証明証のコピー」は「信書」に該当しません。返送する古物商にとっての意思表示や事実通知のための文書ではないからです。したがって、郵便法の規制を気にする必要はありません。

ただし、領収証や見積書、送付商品一覧表や買取依頼をした人向けの広告は「信書」に該当するので、添え状・送り状でなければなりません。。

売却した商品を送付するとき

売却した商品を宅配便で送付する際、挨拶状や納品書、領収証、会員IDやパスワードの通知書面、購入者向けの広告などを同梱するのであれば「信書」に該当するので、郵便法の規制に従う必要があります。それ以外の書類や文書は自由です。

ただし、割引券や買取クーポンを同梱する場合は検討を要します。

ホームページや新聞の折込み広告で配布しているなど、誰でも使える券であれば「信書」ではありません。しかし、購入者限定割引券など利用者が限定されているものは、特定の受取人に対して勧誘の意思表示をする文書となり「信書」に該当する可能性があります。

まとめ:「信書かな?」と思ったら

以上、信書と宅配便の一般的なルールに関して解説をしました。

文書や書類の宅配は、信書であれば無封の添え状・送り状でなければなりませんが、信書でないならば自由にすることができます。信書か否かの基準は「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」かどうかで決まります。

しかし、実際の業務の中で信書に該当するか否か、郵便法の規定に違反するか否かの判断に悩むケースが出てくると思われます。過去の事例の中でも、わずかな事実の違いで結論が分かれたものもあると思われます。

総務省や総合通信局で問い合わせを受け付けているそうなので、判断に迷ったときはそちらに連絡することをおすすめします。

連絡先記載ページ:総務省「信書の送達についてのお願い」

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◆脚注◆

  1. 郵便法4条2項中の定義。
  2. 総務省「信書に該当する文書に関する指針(平成15年総務省告示第270号)」2頁参照。
  3. 総務省・前掲指針3~4頁参照。
  4. 書籍のまえがきやあとがきに「わが友○○に捧げる」と書いていたとしても、一般の読者が読めるものですから、特定の受取人に向けた「信書」には該当しないと思います。おそらく。
  5. 信書便法に基づく許可です。総務省「信書便事業者一覧」で許可を受けた業者の一覧表をダウンロードできます。
  6. 対象は運送事業者なので、事業者でない者が信書を配達することは違法ではありません。例えば学校の授業中に生徒同士で手紙を回しても、郵便法には違反しません。
  7. 郵便法76条1項。
  8. 郵便法4条3項但書。
  9. 荷物を入れた段ボール箱にガムテープで封をしているのは問題ありません。ただ運送業者が封をした段ボール箱を開けることは稀だと思いますので、箱の中身の信書を無封とすることにどれだけの意味があるのかは疑問です。
  10. コピーを返送せずに古物商が廃棄することもあります。いずれにしても、個人情報なので利用の必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努める義務があります(個人情報保護法19条)。
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