【2018年改正】古物営業改正で追加!5つの本人確認方法

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2018年10月24日から改正古物営業法と同施行規則が施行され、古物買取りの際に必要な本人確認に5つの方法が追加されました。

特に、インターネットなどを利用した非対面取引での本人確認方法の選択肢が増えました。

本記事では、追加された5つの本人確認方法と注意点を解説します。

古物商の本人確認義務について

古物商が売主から古物を買取るときには相手方の住所・氏名・職業・年齢を確認する義務があります。

売主と面と向かって取引を行わない非対面取引においては「売主から住所、氏名、職業、年齢の申出を受けるだけ」「運転免許証のコピーを送ってもらうだけ」ではダメで、法令で定められた方法を利用しなければなりません

以下の方法は、いずれも売主から住所、氏名、職業、年齢の申出を受けた上で行い、不正品の疑いがあるときは直ちに警察官に申告しなければなりません 1

(1)2種類以上の身分証明書等で確認

①2種類以上の身分証明書等(コピー)か、身分証明書等(コピー)+6カ月以内の公共料金等の領収書(コピー)を送ってもらいます。
②身分証明書等に記載された住所に「配達記録郵便等」を「転送しない取扱い」で送付し、
③その到達を確かめます 2
④送ってもらった書類は、古物商が帳簿とともに保存します。

運転免許証や健康保険証、マイナンバーカードなど異なる2つ以上の身分証明書類のコピーを送ってもらう方法です 3

改正前は本人名義の預貯金口座に買取代金を振り込む必要がありましたが、2種類以上の証明書類の送付を受けることで口座振込以外の方法も使えるようになりました。

②「配達記録郵便等」は郵便局のサービスのほか、古物商が宅配業者に集荷サービスを依頼して売主の住所で集荷してもらう方法を利用することもできます。

注意点.公共料金等の領収書は同居家族名義でもよいか?

「公共料金等の領収書」は、公共料金の領収書ならば売主と同居する人の分で構いませんが、公共料金の領収証書以外の書類(社会保険料の領収書など)は売主本人のものでなければなりません。

(2)スマートフォン等で撮影した身分証明書等の画像の送付を受けて確認

①「古物商が提供するソフトウェア」で撮影した顔写真付き身分証明証等の画像を送ってもらいます。
②身分証明書等に記載された住所に「配達記録郵便等」を「転送しない取扱い」で送付し、
③その到達を確かめます。
④送ってもらった画像は、古物商が帳簿とともに保存します。

スマートフォンのカメラで運転免許証などの顔写真の付いた身分証明書を撮影し、その画像を送信してもらって本人確認する方法です 4。顔写真の付いていない健康保険証などは使えません。

「画像」には静止画だけでなく動画も含まれるので、リアルタイムビデオ通話で確認しても構いません。

1と同様、宅配業者による集荷も利用できます。

注意点1.メールによる送信ではダメ!

画像をメールで送ってもらうだけではダメで、「古物商が提供するソフトウェア 5」を利用した撮影・送信を受けなければなりません。画像の加工・編集によるなりすまし等を防止するためです。

したがって、ソフトウェアに画像の加工・編集機能が付いているものはNGですし、あらかじめ撮影した画像の送信ではないことを確認する 6必要があります。

注意点2.表面の画像だけではダメ!

送信してもらう画像は「身分証明書等の厚みその他の特徴」が分かるものでなければなりません。顔写真、住所、氏名が記載された面を撮影したものと、厚みが分かるように斜めに傾けて撮影したもの2種類を送信してもらう等の方法が想定されています。

カラーコピーやスキャンした画像を悪用したなりすまし等を防止するためです。

(3)身分証明書等のICチップ情報の送信を受けて確認

①顔写真付き身分証明証等のICチップに記録された住所・氏名・年齢・顔写真情報を送ってもらいます。
②身分証明書等に記載された住所に「配達記録郵便等」を「転送しない取扱い」で送付し、
③その到達を確かめます。
④送ってもらった情報は、古物商が帳簿とともに保存します。

運転免許証やマイナンバーカードには、ICチップが組み込まれています。それら顔写真付き身分証明書のICチップの情報を売主がカードリーダーで読み取り、その送信を受けて本人確認する方法です 7

注意点1.顔写真付き身分証明書でなければダメ!

ICチップが組み込まれた身分証明書であっても、顔写真が貼り付けられていない証明書は使えません。ICチップに記録された顔写真の情報を送ってもらう必要があるからです。

注意点2.ICチップ情報が偽造でないことを確認しなければダメ!

古物商は、ICチップ情報が真正なものであることを確認しなければなりません。ICチップに記録されている電子署名の送信を併せて受けて、暗号化された情報を復号する等の措置が求められます。

本人確認用のソフトウェアを導入する場合は、要件を満たすかどうかを事前に開発者の方に確認してください。

(4)売主の容貌の画像+顔写真付き身分証明書の画像で確認

①「古物商が提供するソフトウェア」で撮影した「売主の容貌」と「顔写真付き身分証明証等」の画像を送ってもらいます。
送ってもらった「顔写真付き身分証明証等」の画像は、古物商が帳簿とともに保存します。

「売主の顔」と「身分証明書の顔写真」を照合して本人確認する方法です 8。店舗で売主と対面して買取りする際の方法とほぼ同じ方法です。この方法を使えば配達記録郵便などを利用しなくてもよいので、売主が郵便を受け取れないという場合でも使えます。

静止画だけではなく動画でもよいので、リアルタイムビデオ通話で確認することも想定されています。

「古物商が提供するソフトウェア」の要件や、身分証明書の画像は厚み等の特徴が確認できるものであることは、前述の「2.スマートフォン等で撮影した身分証明書等の画像の送付を受けて確認」と同様です。

(5)売主の容貌の画像+身分証明書のICチップ情報で確認

①「古物商が提供するソフトウェア」で撮影した「売主の容貌」の画像を送ってもらいます。
②顔写真付き身分証明証等のICチップに記録された住所・氏名・年齢・顔写真情報を送ってもらいます。

「売主の顔」と「ICチップに記録された住所・氏名・年齢・顔写真情報」を照合して本人確認する方法です 9。この方法も配達記録郵便などを使わなくてよいので、忙しい売主にとっては便利な方法だと思われます。

まとめ

本人確認は古物営業を行う上で避けては通れない義務です。面倒だからと不適切な方法で済ませてしまうと、営業停止や許可取消し、損害賠償請求をされるおそれがあります。

事業者の規模や取扱物品、技術、経験、顧客層などに応じて、適切な方法で本人確認を行うようにしましょう。

最後までお読みいただきありがとうございます
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【松葉行政書士事務所】
担当行政書士:松葉 紀人

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◆脚注◆

  1. 古物営業法15条3項:申告義務。
  2. 宅配便の集荷サービスを利用する、買取物送付用の専用段ボールを送る、パスワードを送りその返送を待って買取代金を支払うなどの方法が想定されています。
  3. 改正古物営業法施行規則15条3項5号。
  4. 改正古物営業法施行規則15条3項4号。
  5. 古物商自ら開発したものだけでなく、委託先や第三者が開発したソフトウェアも含まれます。
  6. ワンタイムパスワードなどランダムかつ時限的な文字列を一緒に撮影させる等の方法が考えられます。
  7. 改正古物営業法施行規則15条3項4号。
  8. 改正古物営業法施行規則15条3項8号。
  9. 改正古物営業法施行規則15条3項9号。
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