前回、前々回の記事に続いて、古物商許可申請の際に提出する書類について解説します。
前回までは、警察署でもらう申請用紙と略歴書、添付書類の説明をしました。
今回は、その他提出が必要になる書類について解説していきます。
ただし、その他の書類については都道府県によって取扱いが異なります。警察署のサイトに必要な書類や手続が掲載されているところもありますが、掲載されていない書類が必要になることもあります。本記事は参考程度にとどめて、ご自身で申請される場合は所轄の警察署にもお問い合わせください。
「申請手続の流れ」と「必要な書類」については下記のページをご参照ください。
◆申請手続の流れ
◆申請に必要な書類
営業所の使用権限が分かる書類
申請者が営業所を使用する権利があるか確認できる書類の提出を求められることがあります。
自分で所有する土地・建物の場合
営業所が申請者自身の所有する土地・建物である場合は、自身が所有者であることを示す土地・建物それぞれの権利証(コピー)又は登記簿謄本を提出します。
ただし、自己所有の土地・建物であれば書類は不要というところもあります。
他人の所有する土地・建物である場合
店舗を借りる場合だけでなく、親や家族の所有である場合も含まれます。営業所の使用を承諾してもらっていることが分かる書面(使用承諾書など)を提出します。
賃貸店舗であれば賃貸借契約書のコピーで大丈夫です。
ただし、住居用アパートやマンションの一室を使うときは、契約書からは店舗利用が許諾されているか分からない場合もあります。その際は、契約書とは別に事業利用を許諾する旨の使用承諾書をもらう必要があります 1。
親や家族が所有する建物を利用する場合も、使用承諾書を書いてもらって提出します。
使用承諾書(サンプル)(pdfファイルが開きます)
営業所の地図・内部の見取図
営業所周辺の地図や、営業所内部の見取図の提出を求められるところもあるそうです 2。
営業所の地図
地図は、周辺の大きな建物や駅が載っているなど営業所の場所が分かる縮尺のものを使用します。手書きでも問題ありません。
ゼンリンの住宅地図やグーグルマップ(これもゼンリン提供の地図です)のコピーでも構いませんが、利用規約を守って使いましょう。ゼンリンの地図であれば「複製許諾証」1枚あたり200円(税別)を貼付する必要があります 3。
他には、国土交通省の国土地理院が発行する地図であれば、許可申請目的であれば許諾不要でコピーすることができます。利用規約を守って使用するようにしましょう。
○各地図の利用規約
株式会社ゼンリン:地図複製利用のご案内
Google マップ、Google Earth、ストリートビューの使用
国土地理院の地図の利用手続
営業所内部の見取図
営業所の平面図です。在庫や取引台帳を保管できる場所があるか、住居兼営業所であれば住居部分と事業所部分が分離されているかを確認するためのものと思われます。
賃貸物件であれば不動産屋から平面図をもらって提出してもいいですし、手書きで作っても構いません。厳密な寸法を知ることが目的ではないので、縮尺にこだわり過ぎることなく、大まかな内部の配置が分かる程度でいいでしょう。
プロバイダ等からの資料のコピー
提出する必要がある人は?
インターネットで自分のHPを使って古物取引をする場合に提出する必要があります。
申請書の「電気通信回線に接続して行う自動公衆送信により公衆の閲覧に供する方法を用いるかどうかの別」で「用いる」を選択した人です。
詳細は下記の記事にありますが、ネットオークションで単発の取引をするだけであれば不要です。
独自ドメインを取得してHPを作成する場合
「ドメイン登録者」「ドメイン」「発行元(プロバイダ名)」が分かる書面を提出します。ドメインとは、HPアドレス「https://www.○○○.jp」の「○○○.jp」部分です。本サイトであれば、ドメインは「office-matsuba.com」です。通常、プロバイダやドメイン取得サイトを通してドメインを取得します。
プロバイダから取得した場合は、契約時に送付された書類(「登録のお知らせ」「設定通知書」等)が利用できます。
書類がない場合や取得サイトで購入した場合は「ドメイン検索」「WHOIS検索」のドメイン検索サイトを使います。自分のドメインを検索し、検索結果の「ドメイン登録者名」欄に自分の名前があればその画面をプリントして提出します 4。
例えば「yahoo.co.jp」で検索すれば下記のような画面が出てきます。
また、ドメイン登録者の名称が他人(会社、家族など)である場合には、URL使用承諾書も提出します。
ヤフオク!などにストア出店する場合
独自のドメインを取得せず、大手ネットショップのスペースを間借りする形でHPを作成し取引をする場合にも書類提出が必要になります 5。
この場合は、独自ドメインがないので、ストア出店の契約画面をプリントして提出します。
申請者が未成年の場合:法定代理人の承諾書
古物営業の申請者が未成年者である場合には、法定代理人が営業の許可をしたことを証明する書面も提出します 6。
未成年者の営業同意書(サンプル)(pdfファイルが開きます)
法人の場合:定款及び登記事項証明書
申請者が法人の場合は、法人の「定款」と「登記事項証明書(履歴事項全部証明書)」も提出します。
定款の変更をしている場合には、設立時のものではなく現在有効なものを提出します。
定款はコピーで構いませんが、原本と相違ないことを証明する文言を朱書き・押印します。
(記載例)
以上、原本と相違ありません。
令和○年○月○日
【法人の住所】
代表取締役 【代表者氏名】 代表者印
最後に
許可申請書1式、略歴書、その他の添付書類を揃えて管轄の営業所に提出すれば、申請手続の大部分は終了です。要件を満たしていれば警察署から許可証発行の連絡があるので、それまで待ちましょう。
ただし、許可証さえもらえば自由に営業できるのかと言うと、営業する上では本人確認義務などの義務を果たす必要があります。詳細は別記事で解説していますのでご参照ください。
◆脚注◆
- 使用承諾書の発行手数料が掛かる場合もあります。 ↩
- いくつか警察署のサイトを見た限りでは地図・見取図が要求されるところはなかったのですが、記載がないだけかもしれません。記載がないものを要求されることもあるので予め確認しておくことが必要です。 ↩
- 地図も著作物なので、一部の例外を除き無断で複製することはできません。貼付がなくても受け付けてもらえるかもしれませんが、違法行為です。 ↩
- 自分の氏名の代わりにドメイン取得会社の名前を公開する「WHOIS情報の公開代理」などのサービスを利用している場合は、この方法は使えません。その場合は、ドメイン取得サイトの契約画面をプリントして提出するなど別の方法を採ります。具体的な方法は管轄の警察署に相談することをお勧めします。 ↩
- ストア出店などを行わずにオークションを利用する場合には、書類の提出は不要というところが多いです。 ↩
- なお、未成年者が古物商の営業を行うときは法務局で登記をする必要があります(商法4条、5条) ↩